沈黙と魔女

Posted in , 雑記 on 10月 29th, 2009 by inoma – Be the first to comment

 かつて76の太陽が知られ、80余りの世界が栄えていたという。
 それらの世界は相互につながれ
 大いなる栄華を誇った

 やがて一つの魔女が現れた
 魔女は辺境の世界より現れ、徐々に文明の中心地へと向かったとされる。
 魔女は多くの世界に恐怖をもたらした。
 この世でもっとも恐ろしいのは沈黙だ。
 だから魔女は沈黙の種をまき
 多くの世界が沈黙の闇へ沈んだ。

 逃げ延びた人々は
 三度故郷へと還る
 沈黙から逃れ
 言葉と
 過去を語る詩を忘れぬために

 “文明”と言う言葉が母なる惑星マザーと
 おなじ太陽を回るいくつかの小さな社会を挿す様になり
 数百年が過ぎた

 かつて知られた80余りの世界の内
 3つをのぞいた世界が
 沈黙の闇に沈んだ

 社会がマザーを中心に回り、
 マザーこそが世界となった頃
 魔女はその姿を何処かへと隠し
 しかし沈黙の闇は晴れることはなかった

 てな感じの出だしを考えたんだけど
 この舞台で何を演じたら面白いんだろうか?

 歴史の流れとしてはル=グインのハイニッシュユニバースににてる気もするんだけど、文化人類学的なとこや、沈黙の闇に落ちた惑星への調査。なんてのも面白いかも知れない。
 出だしは割と小さい規模だったとしても、シリーズ終盤には沈黙の魔女や沈黙そのものについて、つまり世界の成り立ちについて語れると面白いと思う。
 また、ぜったりやりたいなと思うネタは、人々が人類の故郷だと思っているマザーという惑星は、実は人類発祥の地(いわゆる地球ですね)から結構離れたところにある植民地だとか。
 となると、魔女が現れた辺境の地こそが地球だったりしても面白いかも知れない。

 宇宙モノでやる場合は、知性を何種類出すか?なんてのがまた作品の雰囲気にきいてくる。
 ブリンの知性化シリーズではそれこそ、数え切れないくらいの種属が登場する非常に賑やかな宇宙が描かれている(結構殺伐としているけど)。アシモフの銀河帝国(ファウンデーション)には地球人しか登場しない。そこに秘密もあるらしい。いや、ロボットも居るけどさ。
 ル=グインのハイニッシュユニバースにはいろんな人種が出てくるけれど彼らはみんな、基本的にはハインの植民者の子孫だ。つまり親戚、というか同じ種属というか。
 地球人も、そうでない種属も、みんなマザーを故郷だと思って住んでるってのでも面白いかも。川上稔の境界線上のホライゾンみたいになるけど。

 とりあえず、お久しぶりのエントリはここら辺で。

牛とタマネギとバタースープ

Posted in 同人活動, on 9月 15th, 2009 by inoma – Be the first to comment

 選ばれし者は牛になる。
 私の街にも牛が居て、神殿で飼われていた。
 聖なる牛には“妻”と呼ばれる巫女が付く。
 巫女の名をユーファンドラと言う。
 牛はかつて私の友人だった男で、ユーファンドラもまた、幼馴染みだった。

 牛となった友人と私は今は巫女となったユーファンドラを巡って様々な面で競い合っていた。
 彼女が巫女となってからは、彼の目的は牛に選ばれることとなった。
 友人は日々精進し、身を清め、神殿に寄付をし、奉仕活動にいそしみ、そして、牛となった。

 牛となったとはいえ、永年の憧れの少女を射止めた友人が少し羨ましかったこともまた、事実だ。

 ある日、神託がおり、私は牛に選ばれた。
 その基準は明かではないが、神に選ばれ牛になることは大いなる名誉であり、喜びとされている。
 神託は町中に張り出され、私は喜びと祝福と共に神殿へ上った。

 神殿では身を清め、一月の間に儀式に参加する様に、と言われ、牛になるための生活が始まった。
 神官達と同じ精進料理を食べ、湯と水による禊ぎが行われ、瞑想し、心身ともに汚れを落としてゆくのだ。
 その間、ユーファンドラが世話係の一人となった。
 彼女が神殿にあがってからはあまり話をする機会もなかったので、つもる話もあり有意義な日々ともいえた。
 しかし、そんな日々は長くは続かない。
 私は、一月の内に身と心を清め、牛にならねばならない。
 牛になった私の妻がユーファンドラとは限らないが、そうであれば嬉しいと思い、精進することにした。

 そして、準備が整い、いよいよ私が牛となる日が来た。
 聖水で身を清め、神殿の奥へ向かう。
 儀式の間にはこの日のために、私のために用意されたバタースープが用意されていた。
 聖なる動物である牛からの恵みであるバターを使ったスープだ。
 このスープを飲むと私は牛になるという。

 覚悟を決め、ユーファンドラへの未練を断ち切り、私はバタースープに口をつけた。

 そして、何も起こらなかった。

 神官の一人が歩み寄り私にビジョンを授けた。

 汚染され腐敗した海に聖なるタマネギが浮かんでいる。
 これが世界である。
 タマネギは世界であり創造主の姿だという。

 牛となれなかった者は、この汚れた海を最後の一滴までも清め、世界と神を救う使命を与えられるという。

 部屋に戻された私は一人考えていた。
 聖なるタマネギ、そして選ばれ、牛となった友人。
 いったいどういうことなのだろう?

 祭りは明日へ延期となった。本来であれば牛となった私を迎え祝福する祭りだ。
 であれば、翌日の祭りはいったい何のための祭りだろう。
 窓から見下ろす街ではせっかちな民がすでに騒ぎを始めている。
 ふと人の気配を感じ振り返ると、果たしてそこには美しきユーファンドラが立っていた。

「驚いたでしょう。これがこの街の真実よ。貴方は明日には発たねばならない、なら、最後に…… 」
 永年、夢に見続けた現実がそこにはあった。だからといってなんだというのだろう。
「ユーファンドラ、此処を出よう。世界の果てへ、腐ったタマネギも、牛も居ないところまで逃げよう」
 あまりのむなしさにそうささやいていた。ぬれた瞳で彼女はしかし首を振った。
「此処は私の生きる場所、そして、護るべき聖域。そして何より、私と彼にとって、ただ一つの安息の地」
「ならば、私は逃げる。地に潜り、人に紛れ、再び君を迎えに来る」
「貴方はきっと迎えに来ない、どこかに真実を見つけてしまうでしょう。そこが貴方にとっての安息の地」

 こうして私は夜のとばりと祭りの喧噪に紛れ彼の地から遠く離れた街に落ち着いた。

 風の噂では、遠き故郷では聖なる二頭の牛が神殿で暮らしているということだ。

定型詩

Posted in , 雑記 on 5月 20th, 2009 by inoma – Be the first to comment

 以前ポストした「ひとつの歌のディーロッテ」及びサンクトリン版の「Di-rotte kst mai findra」はこの限りではありません。
 定型詩という概念を思いつ区よりも前なので。

 ということで、意味不明な書き出しですね。一月ほど前にポストしたDi-rotte kst mai findraはサンクトリンととりあえず呼称している人工言語で書きました。門の世界(ネコフーミの舞台)で使われることを想定していたのですがおもしろかったので本来関係ないこの詩でも使ってみることにしました。
 実は今までいくつかの人工言語を作ろうと試したことがありました。同人誌「缶の底」に掲載し、もっとも多くの人から質問を受けた詩「Spring letter」もそん残骸だったりします。ものすごく覚えにくいアルファベットもつくったり。
 そんで、今回は門の世界の地名を記すため(つまり地図を作るため)の文字を作ったのがこのサンクトリン。結構きれいな文字なんですよ〜。しかも書きやすい。ただ、文字のアイデンティティは強烈らしく、同じ言語ベースでもワープロでラテン文字転写で打っているときと紙にペンで書いているときではだいぶ雰囲気が変わってきますね。おもしろい。

 そしてサンクトリンによる初めての作品が先述のDi-rotte kst mai findraな訳です。一度詩を作ってしまうと半強制的にいくつかの単語と文法が決まってくるのが良いですね。人工言語の創作にチャレンジしている方で詰まっている人はまず、何か詩を書いてみては如何でしょう。
 閑話休題。
 で、やっと表題のアイデアですが、サンクトリンで詩を作るときの定型を作ってみたのです。短歌とか律詩とか絶句とか俳句とかああ言うルールですね。まあ、どちらかというとリズムやテンポを決めるルールではなく記述内容に関するルールですが。

前文1 Antrada mai
序文 詩の説明
前文2 Antrada sin
背景 世界の説明
前文3 Antrada bit
背景 物語開始地点の描写
前文4 Antrada mart
前文 主人公の出自、出発前の日常

主文1 Maianokit mai
発文 主人公の出立、旅の始まり、物語の開始
主文2 Maianokit norl
展文 主人公の試練、危機、転機
主文3 Maianokit mart
収文 主人公の帰還、危機を乗り越え帰還
終文1 Martnorin mai
終文 その後の世界、語り手の話など
終文2 Martnorin mart
結び この詩が何であったか、前文1の類文

 という感じです。ディーロッテはたぶん中途半端に当てはまると思う。なぜなら、ディーロッテを参考にしたから。歴史的な言い方すると過渡期。
 いま、この定型を使って一個詩を作っています。
 その詩は次回以降で。

解説解説っと

Posted in on 4月 26th, 2009 by inoma – Be the first to comment

 さてと昨日掲載した「ひとつの歌のディーロッテ」解説しますよ。

 Di-rotte kst mai findra
 ひとつの歌のディーロッテ
Sith bin amat il miuk

Basin den tol in krmtria en maria

Di-rotte kst mai findra et mil i mil sabiteision
 空に風が満ちていた頃
 天のその頂に輝く光の園があった
 ディーロッテはひとつの歌、小さな小さな物語
sith bin 〜だった時期 amat 風 miuk 空
basin 天頂 krmtria 輝く+土地 maria 光
mai ひとつ findra 歌 mil ちいさい sabiteision 物語

Baidart ous en kamlante

Sabiteision filon en makinant en frau omistol
 緑深きバイダルト
 静かな湖畔の宮殿で物語の幕を上げよう
Baidart バイダルト kamlante 緑、田舎
filon 始める makinant 城 omistol 湖 frau 静かな

とりあえずここまで

Di-rotte kst mai findra

Posted in on 4月 25th, 2009 by inoma – 2 Comments

Sith bin amat il miuk
Basin den tol in krmtria en maria
Di-rotte kst mai findra et mil i mil sabiteision

Baidart ous en kamlante
Sabiteision filon en makinant en frau omistol

Diolbin buit bari Di-rotte
Al fastima en Baidart Milmerie siain en erikt mirt en Di-rotte
Ultmis en makinant en frau omiatol
Baidart miltria en barg bau akiss
et makinant en frau omiatol numant

Et ils bant Milmerie lank mar mist
et bantl mousi mali not
Di-rotte kst mai findra
Al fastima en matmia Ranat ort kal sigt fiid

Al fandran ous karikar bian dor en miuk
nolk en basten ist en gabatt
fand ost milte en karikar at mmiuk
Baidart en barg bau akiss
Lan kout ent karikar en out miuk link als en mag omiatol

Biet omiatol sen numant
mark ludines ent zarlatai en bibilom
sank tol malmoin filyk ast baks non da dal
et mint en maria mosn kl marken figia

Krianan biit en Ranat
Serion del gaimant mus silt Ranat
et lak makion est klim
Bariast en Roth mal et karikar

Di-rotte al fastima en Ranat
Souln ent siusio makis
Natin olmist est Singamint al randsim en Marllia
Di-rotte ludin ent zarlatai et sion en Ranat
Ol bans giln en zarlatai ankamif alt o makis
Baidart ous en kamlante
Lodain saus filmolie ent miuk

Di-rotte findur mols tamil mil mail findra en al lank
Lodain mu ent makis
Sigan lo ent zarlatai bin baisin

Al krmtria en lailan sank
Fillon margi auf gamin zarlatai
akiss nun jil sinkia
et sigal dauk ool
Baidart ous en kamlante et makinant en frau omiatol numant

Lodain as Singamint set ol gik
Di-rotte mu et lomsus en Marllia

Sith guan dol amat il miuk
Ond main gul bin dia mol tria
Namiatrin si en findra
Di-rotte kst mai findera
et mil i mil sabiteision

ひとつの歌のディーロッテ

Posted in on 4月 25th, 2009 by inoma – Be the first to comment

空に風が満ちていた頃
天のその頂に輝く光の園があった
ディーロッテはひとつの歌、小さな小さな物語

緑深きバイダルト
静かな湖畔の宮殿で物語の幕を上げよう

ディーロッテを紹介しよう
バイダルトの姫ミルメリエ後にディーロッテの母
湖の宮殿に暮らしていた
緑深きバイダルト軸より遠き小国ののどかな湖畔の宮殿で

やがてミルメリエは恋に落ち
一人の赤子を産み落とす
小さな歌のディーロッテ
門を開く鍵を持つ大公ラナトの姫となる

空を渦巻く争いの音
天の帝は病に倒れ
父は戦で空に散る
軸から遠きバイダルト
緑深き湖の水面に映すは天上の戦火

されど平穏なる水面
母は庭園にて空を見上げ
遙かな天頂 幾艘もの船が光を散らし
そのしずくを小さく、ほんのかすかに 照らしていた

大公ラナトの弟クリアナン
兄亡き後の門を守り
長き時を経て
ルースのバリアストが戦を収めた

ラナトの娘のディーロッテ
美しい少女へと育っていた
まだ見ぬ許嫁はシンガミト マーリアの王子なり

空を見上げ 帰らぬ父待つディーロッテ
天に抱かれ白き鳥が少女の心を射抜かん
緑深きバイダルト
空舞う翼はローダイン

ディーロッテは歌を唄う
小さなひとつの恋の歌
ローダインは少女にほほえみ二人はつかの間空をかける

遙か高みに光の国
風駆け抜ける空の道
天を支える軸を越え
そして二人は舞い戻る
緑深きバイダルトのどかな湖畔の宮殿に

ローダイン 白き衣のシンガミト
ディーロッテはほほえみマーリアに旅立った

空を満たした風が凪ぎ
人が大地に降りてなお
歌い継がれる歌がある
ひとつの歌のディーロッテ
小さな小さな物語

赤い花リメイク

Posted in ネタ帳, on 2月 27th, 2009 by inoma – Be the first to comment

 同人誌「缶の底」に掲載した詩「赤い花」、とあるフレーズから作った詩ですが、そのままでは歌に出来ないのでなんとなく75調にしてみました。

775・575・577・775でループ。こういう感じでいいのかな?

  • かつて世界は蒼と翠に覆われて
  • 遙かなる玉座は空の楽園に
  • 金色の光普く世界を照らし
  • 天舟が雲を描きて空を舞い
  • やがて見えざる風さえ人は支配する
  • 栄光の時代されどある時風が止み
  • 火が落ちて世界は凪いで地に墜ちる
  • 金色の玉座さえもが砕かれて
  • 歴史は終わり空への道は閉ざされた
  • ダルジェの神の見いだす世界荒れ果てて
  • 楽園は墜ち王国は砕かれて
  • 人々の暮らしも森の営みも
  • 争いも希望切望幸いも
  • 全ては砂の底で眠りについている
  • ダルジェの神は砂漠に種をまいて待ち
  • その種を眠るる過去は受け入れて
  • 紅い時種の芽吹きは世界を包む
  • 砂底に眠るる夢に根を伸ばし
  • 花咲く時を世の末までも待ち続け
  • 花咲く光ダルジェの神の贈り物
  • 何時かまた再び世界を焦がす夢
  • 冷め切らぬ光がその葉に今また宿り
  • 空へまたやがて飛び立つ夜は明けて
  • 日はまた昇り朝を我らは取り戻す
  • ダルジェの花は今も世界の礎と
  • 遙かなるなくしたものを思い出す
  • 足下の今なお砂の底にて眠る
  • 過ちを解きて芽吹く紅い花
  • 故にその木は契約であり天土の
  • 生きる我らの礎と
  • 礎とされた

 初音ミクが動く環境が欲しいな。まともに。

ではまた次回。